観客の認知に着眼するアプローチ
「マジックが起こるのは指先ではなく、観客の頭の中である」とは、よく知られた言葉です。しかし、コインマジックの世界にあっては、指先でおこることに注目されることが多いように感じます。
これをマジックの本道そのままに、観客の心理に立脚して錯覚が起こる原理を組み上げてきたのが、ファットブラザーズの一員であるミゲル・アンヘル・ヘア。スライハンドとは異なる視点でコインマジックの錯覚を起こす手法をDVDにまとめました。
理論と実践
ここではコインマジックにおいて錯覚を引き起こすための原理が9つ発表されています。 まず原理の説明を行い、それからそれを利用した手順を実演、解説。引っかかる場所は多くありますが、そのためにどんな罠がはられていたのか、なぜ特段怪しい動きがないのに現象がおきたのか、その全てが明らかになります。
見やすくなってます
またオリジナル版では不評だったDVDの構造にも手を入れました。オリジナル版は昨今の商品には珍しくメニューもチャプターもなかったため、何度も見返すときに不便な面がありました。そこで日本語版ではチャプターの設定はもちろん、メニューも新たに作成。欠落の多かった英語字幕部分も、オリジナル原稿から翻訳しなおしています。
今回、私(滝沢)に当DVDの翻訳を勧めてくれたポン太 the スミス氏より推薦文を頂きましたので、掲載します。
マジックとは、つまるところ知覚・認知の問題です。コインが消えるなどということは実際には起こりませんが、消失の知覚は生じます。存在しない魔法を知覚させるのがマジックというわけです。人が物事をどのように知覚・認知するのか? その理解がマジシャンにとって重要であることは疑う余地がありません。
スぺインのマジックが突出している理由のひとつには、認知メカニズムの研究が挙げられるでしょう。アスカニオから始まった高度な理論研究は、世代を超えて受け継がれ、発展を続けています。その蓄積の上にスペインマジックは築かれているのです。
このDVDでは、スペインを代表するコインマンであり理論家であるミゲル・アンヘル・ヘアが、コインマジックに関する認知セオリーを作品例と共に惜しみなく解説しています。濃厚で深遠で示唆に富む内容です。無数の気づきが得られるでしょう。
ここにあるコンセプトを学ばないのは、端的に言って損です。ミスディレクションを学ばずにマジックをするようなもので、マジックの可能性を大きく制限してしまいます。逆に言えば、マジックの可能性を大きく開くのがこのDVDということです。
セオリーを知ることで、マジックがより正しく、より巧妙に行えるようになります。このDVDは世界最先端の理論に触れることのできる貴重な資料です。脳を欺く見事な知恵を学んでください。
ーポン太 the スミス
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第1章:ゲシュタルト
特定の動きを見たとき、脳は一番素直な「わかりやすい結果」を想像します。
それを利用し、「わかりやすい動作」の裏をかいて秘密の動作を行う手法。
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第2章:位置の認知エラー
密かに道具の位置を変え、それによって錯覚を作り出す手法。観客の注意をコントロールすることで、不都合な情報を忘れさせてしまいます。
※なお実演映像が演技の途中で終了しますが、これは意図的なものです。
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第3章:位置を変える
秘密の動作をいかに筋の通った動きに紛れ込ませ、道具の位置を密かに移動させるか。
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第4章:パイル
重ねたコインは、ぱっと見ただけでは正確な枚数が数えられません。
それを利用し、枚数に錯覚を起こさせる原理。
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第5章:ダブルリフト
コインもカードと同じようにダブルリフトが可能です。
それを使った錯覚の起こし方と手順を紹介。
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第6章:コインの状態を錯誤させる
例えば実際とは異なる枚数をコールする。
例えば種類の異なるコインをエキストラとして使う。そういった工夫が活きる場面や、その利用法を紹介します。
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第7章:欠けた部分の補完
コインを並べ、特定の位置に手を置くと、その下にコインがないのに観客の頭は「そこにある」と想像してしまう。
整合性を保とうとする脳の働きにより、ないはずのものをあるように補完する原理を逆手に取る方法を紹介。
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第8章:ビジュアル・ジオメトリー
コインの並びに対して体の中心線をずらすことで、錯覚を起こす手法。
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第9章:ダブル・アクション
通常の動作をやりながら同時に秘密の動作を行う際、ノイズを減らして状況をクリアに(しかし秘密の動作には気付かれずに)伝えるための手法と考え方。
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